広彩コンサルタントロゴ



トップページ会社概要沿革業務実績委託事例案内図採用情報





FileNo. 014
 
今回は、道路事業により敷地と道路に高低差が生じ、建物の出入りに支障が生じたケースです。



1. 対象物件の概要


■ 敷地概要
  • 敷地面積 69u
  • 買収面積  0u
  • 残地面積 69u
  • 取得割合  0%
  • 建築基準法の用途地域制限
    近隣商業地域
  • 建築基準法の建築制限
    建ぺい率  80%   
    容積率   200%
    準防火地域

■ 建物概要
 
  • 木造平家建自治会館
      建築面積:50u
      延床面積:50u
  • 建物は地域住民の自治会が所有し、住民の会合や集いの場として利用されている。

 
2. 検討のポイント

  1. 隣接地補償(みぞかき補償※)であること。
  2. 道路が3m嵩上げとなり、敷地と道路に高低差が生じること。
  3. 支障となるのは敷地出入口の高低差に起因するものであること。
  4. 敷地内には階段を設置する空地がないこと。
  5. 自治会の建物という地域性の高い用途であるため、当該地での機能回復が望ましいこと。
※ 公共事業による土地の収用、又は使用により、隣接地などに高低差が生じた場合、通路を確保するため階段やスロープ等の工作物などを設置するための工事費の補償
3. 考えられる案

<第一案>
 建物を一部改造し、室内に階段を設置する案です。押入の上部の屋根を改造し、階段室を設けます。

■ 利 点
  • 建物全体を移転対象とすることなく、一部の改造により機能回復ができます。
■ 問題点
  • 従前は平面的な出入りが可能でしたが、建物の出入りには、常時階段を利用しなければなりません。

 第一案では建物を一部改造することにより建物内へ階段を確保しましたが、階段部分の床面積が増加することや、押入の位置が移動します。
第二案では建物を立体集約し、間取りを確保できるか検討を行います。
<第二案>

建物を2階建にして階段の設置・間取りの確保を検討した案です。


■ 利 点
  • 各部屋の面積の確保が出来ます。
■ 問題点
  • 大広間が二分され、従前の利用形態と大きく異なり、機能回復になりません。
 第二案では、建物を2階建てにすることにより、機能回復が図れるか検討を行いましたが、二分される大広間は集会所として大勢の人が集う場所であり、1階と2階に大広間が分断されることは合理的ではありません。
<第三案>

建物の1階に道路位置と同じ高さの鉄骨架台を設け、2階に建物を建築する案です。

■ 利 点
  • 道路との高低差がなくなり、従前の建物利用機能が回復します。
■ 問題点
  • 鉄骨の架台を設置するため、補償額が高額になります。
  • 建物の位置が高くなるため、近隣に日照阻害をもたらします。
<第四案>

 現在の敷地全体に土を盛り、嵩上げされた道路と同じ高さにした後に、建物を建築する案です。

■ 利 点
  • 道路との高低差がなくなり、従前の建物利用機能が回復します。
■ 問題点
  • 敷地の造成工事費が加わるため、補償額が高額となります。
  • 建物の位置が高くなるため、近隣に日照阻害、さらに雨水処理などの問題が生じます。
4. まとめ

 今回の事例は用地買収に伴う土地の減少により生じる阻害の機能回復ではなく、道路と敷地との高低差のために生じる阻害の機能回復を図ったものです。
 第二案は建物の面積の確保は可能ですが、大広間が二分されることは本来の用途の機能回復にはなりません。
 第三案は鉄骨架台を設けることにより、また、第四案は敷地を嵩上げすることで、共に機能回復が図れますが、補償額が高額になります。さらに、敷地の雨水処理、日照阻害、圧迫感など近隣に及ぼす影響もあり、これらの事項もクリアーにしなければなりません。
 本件は建物の用途が自治会館であり、第一に人が住むための住環境の機能回復を求めるものではありません。よって、経済的合理性も考慮し、第一案が採用案となりました。

 なお、隣接地補償で敷地の嵩上げを検討する際は、近隣にもたらす影響等も十分調査・検討することが必要です。調査内容については多岐に渡るため詳細は割愛させて頂きました。


>>このページの先頭へ