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FileNo. 019
 
 今回の事例は現道拡幅により自動車部品加工工場が支障となったケ−スです。工場はサイドミラ−の組立を行う組立部門と、オ−トメ−ション製造装置でドア、ボンネットを加工する製造部門に分かれています。



1. 対象物件の概要



■ 敷地概要
  • 敷地面積 4,800u
  • 買収面積   300u
  • 残地面積 4,500u
  • 取得割合   6.2%
  • 建築基準法の建築制限 
    準工業地域
     建ぺい率 : 70%(60%+10%角地緩和)
     容積率   : 200%
     防火指定 : なし
■ 建物概要
  • 各建物の使用区分は以下のとおりです。
  構造 用途 建築面積 延床面積 使用区分
A棟 軽量鉄骨造平家建 倉 庫 150u 140u 組立部門
B棟 軽量鉄骨造平家建 倉 庫 140u 140u
C棟 軽量鉄骨造平家建 工 場 130u 130u
D棟 鉄骨造平家建 工 場 1,250u 1,250u 製造部門
E棟 鉄骨造平家建 工 場 1,400u 1,400u
F棟 ブロック造平家建 ボイラ−室 30u 30u
G棟 軽量鉄骨造平家建 変電室 40u 40u
    3,140u 3130u  
  • 建築年月日は全て昭和43年8月です。
  • 建築基準法上、既存の建物を残地に建築することは可能です。

■ 使用状況
  • 大手自動車販売企業のグル−プ会社であり、組立部門と製造部門に分かれ自動車部品の加工をおこなう。
  • 組立部門ではサイドミラ−の組立がおこなわれ製品の入荷・出荷はA棟東側空地が利用されている。
  • 製造部門ではオ−トメ−ション化した生産ラインでボンネット、ドア等の加工をおこない、製品の入荷・出荷は敷地南側の荷捌き場が利用されている。
  • 製造部門に17名、組立部門に5名が専属で従事しており、両部門に生産ラインの関連性はない。
  • 当該工場は近隣に存する本社工場が擁する第二工場であり、事務処理等の管理部門は全て本社でおこなっている。

■ 工場立地法について
  • 工場立地法は、工場と周辺地域の生活環境の調和を図ることを目的として制定された法律です。(昭和49年3月31日施行) 
  この法律で工場を大別すると下記の2通りに分類されます。
    @既存工場 … 昭和49年6月28日に既に設置されている工場
    A新設工場 … 昭和49年6月29日以後新たに設置された工場

  更に、上記@、Aの工場はその規模により次の2通りに分類されます。
    ◎特定工場 … 敷地面積9,000u以上又は建築面積の合計が3,000u以上
    ◎小規模工場 … 特定工場の規模に達しない工場
 
 特定工場を新設する場合、各都道府県知事への届出が義務付けられています。届出の内容は、特定工場の敷地面積、建築面積、生産施設(工場)、緑地及び環境施設の面積等です。これらの設置面積には制限があり、『工場立地に関する準則』で定められています。(一例として、生産施設は業種により敷地の15〜40%以下の制限や、緑地が敷地の20%以上など)
 既存の特定工場が敷地面積、生産施設・緑地面積等の変更をおこなう場合も届出は必要です。ただし、既存工場には、『工場立地に関する準則の備考』に設置面積の緩和措置があります。尚、それらの説明は多種に及ぶため、詳細については省略いたします。
 小規模工場は工場立地法に適合するよう義務付けられますが、届出の必要はありません。又、生産施設の撤去、及び変更を伴わない場合も届出の必要はありません。

 対象となる工場は建築面積の合計が3,000u以上で特定工場に分類されますが、昭和49年6月28日以前に設置された既存工場であり、設立時より現在まで生産施設等の変更を行っていないため、工場立地法の届出はなされていません。
 今回、工場棟の移転が生じることになれば、工場立地法の届出が必要になります。同法の規定により、生産施設面積の上限、必要な緑地面積等を算出し(準則の計算)、これらを満足させなければなりません。


2. 検討のポイント

  1. 工場の組立部門のみが支障となっていること。
  2. 組立部門と製造部門の生産ラインに関連はないこと。
  3. 残地に工場棟を移転する際は、工場立地法の規制の対象になること。
3. 考えられる案
<第一案>A・B・C棟 (組立部門)の構内再築
 直接支障になるA・B・C棟を、敷地南側に従前と同じ形状で建築する案です。工場棟を残地に移転することになり、工場立地法の届出が必要になります。

■利点
  • 従前と同様に棟続きの配置ができ、作業工程を損なうことがありません。
■問題点
  • 工場立地法の準則の計算により、工場は残地に移転できません。
  • 製造部門の荷捌き場が減少し、作業効率が低下します。




 工場を残地に移転すると工場立地法の規制を受けます。準則の計算を行った結果、当該工場の残地内移転は同法の規定を満たすことはできません。そこで、直接支障になる組立部門のみの構外移転が可能か否かを検討します。

<第二案>分割移転工法 A・B・C棟(組立部門)のみを構外再築
 直接支障になるA・B・C棟の組立部門のみを構外に移転する案です。構外移転の組立部門と、残地に存する製造部門に業務上の関連はなく、分割しても業務に支障はありません。又、残地での変更も建物の撤去のみであり、工場立地法の届出は必要ありません。

■利点
  • 工場の移転が可能となります。
  • 各部門に関連性はないため、業務に支障が生じることはありません。
■問題点
  • 組立部門と製造部門が分割されることは、一団の土地に各部門が在していた従前の工場の形態と大きく異なります。
4. まとめ
 今回は、工場立地法の制限が伴う移転工法であります。同法の規定により残地に移転させることは困難であるため、おのずと構外へ移転先を求めることになります。
 本工場の製造部門と組立部門は関連性のない業務を行っていることが確認でき、分割してもその機能を損なうことはないと判断できました。従って、組立部門のみを構外へ移転させる分割移転工法が採用案になりました。
 工場立地法の対象となる既存工場の移転については、その事例により行政指導の見解が必要となりますので十分な協議が必要です。

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