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FileNo. 026
 

今回の事例は新設道路築造事業により、同一敷地内に存する2棟の住宅のうち1棟が支障となり、合理的な移転方法を検討したケースです。




1. 対象物件の概要


■ 敷地概要
  • 敷地面積 : 336u
  • 買収面積 : 108u
  • 残地面積 : 228u
  • 取得割合 :  32%
  • 建築基準法の用途地域制限
     第二種住居地域
  • 建築基準法の建築制限
     建ぺい率  :  60%
     容積率   : 200%
     防火指定 :   なし

■ 建物概要
 
構 造 用 途 建築面積 延床面積
A棟 木造平家建 専用住宅 82u 82u
B棟 木造平家建 専用住宅 78u 78u
合 計       160u  160u

■ 建物と敷地の使用状況等
  • A棟は所有者と妻が居住し、どちらも高齢者です。又、所有者の妻は要介護者です。
  • B棟は所有者の息子世帯が居住し、週末は要介護者の面倒を見ています。
  • 敷地西側は、2台分の自家用車の駐車場となっており、それぞれの世帯で常時使用しています。
  • 駐車場には要介護者のためにスロ−プが設置されています。



2. 検討のポイント

  1. 支障となるのはA棟のみであること。
  2. A棟の居住者は高齢であり、要介護者がいること。
  3. B棟は所有者の息子世帯が居住していること。
  4. それぞれの世帯用に2台の駐車スペ−スが確保されていること。
  5. 公共交通機関は整備されておらず、自動車が主な移動手段であること。

3. 考えられる案
<第一案> A棟・構内再築工法(照応建物)

 直接支障となるA棟の移転先を駐車スペ−スに求めます。A棟の形状を変えずに再配置するのは有形的に困難なため、2階建てとして建築する案です。B棟は直接支障にならないため移転対象外とします。

■利点
  • A棟建築後の移転が可能であり、仮住まいの必要はありません。
  • 経済的です。
■問題点
  • 平家建から2階建にする事で、高齢者、要介護者の日常生活に支障が生じます。
  • 駐車スペ−スが喪失します。



 平家建を2階建にする事で新たに階段の使用が伴います。又、敷地内に確保された駐車スペースが喪失します。これらにより高齢者や要介護者の日常生活に負担がかかります。したがって、残地でのA棟の再築は困難なため、第二案ではA棟の構外移転について検討します。

<第二案> A棟・構外再築工法

 A棟移転先を構外に求めます。B棟は直接支障にならないため移転対象外とします。

■利点
  • 建物の使用形態に変更がありません。
  • 駐車スペ−スが喪失しません。
  • A棟建築後の移転が可能であり、仮住まいの必要がありません。

■問題点
  • 所有者世帯と息子世帯が離れることで、介護が十分に行えません。
  • 新たな移転先が必要になります。



 従来は、息子世帯の目の届く範囲にあった親の世帯(高齢者・要介護者)であるが、この様に離れてしまうと、今まで行われていた介護が、不十分になります。
次に第三案ではB棟の関連移転を検討します。

<第三案> A・B棟構内再築(合棟)

 A棟とB棟を集約して2階建で再配置を行います。第一案の問題点を考慮して、A棟は1階に、B棟は2階に配置します。


■利点
  • A棟を1階に配置する事で、高齢者、要介護者の日常生活に支障はありません。
  • 従前同様の介護が可能です。
  • 駐車スペ−スが喪失しません。

■問題点
  • 再築期間中はB棟の仮住まいが必要になります。
  • 支障にならないB棟が補償対象になり、補償額が高額になります。




4. まとめ

 第一案・第二案では高齢者の生活環境や介護体制に問題が生じます。従って、本件は第三案が採用工法になりました。
 これからの日本は、急速に高齢化が進んでまいります。補償の問題を考えるにあたり、移転対象となる建物に、高齢者や要介護者が居住してる場合も少なくないことでしょう。そこで、移転工法検討の折には、こういった社会環境の変化も合わせて、検討していかなければなりません。


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