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FileNo. 028
 

今回は、道路拡幅事業により木造2階建共同住宅が支障となり合理的な移転方法を検討したケースです。




1. 対象物件の概要


■ 敷地概要
  • 敷地面積 : 880u
  • 買収面積 : 430u
  • 残地面積 : 450u
  • 取得割合 :  48%
  • 建築基準法の用途地域制限
      準工業地域
  • 建築基準法の建築制限
     建ぺい率  :    60%
     容積率   :   200%
     防火指定 :準防火地域

■ 建物の概要
 
No. 構 造 建築面積 延床面積 備 考
A棟 木造2階建共同住宅 80u 160u 支障建物
B棟 木造2階建共同住宅 170u 330u 支障建物
合計      250u  490u  

  • 建物は共同住宅として利用され14世帯(A棟4世帯、B棟10世帯)の入居が可能です。



2. 検討のポイント

  1. 支障となるのはA棟・B棟であること。
  2. 入居者用に駐車台数が14台確保されていること。
  3. 既存の建物は建築基準法等・関係法令に適合していること。
  4. 準防火地域の規制があること。詳細については下記によります。
   ○準防火地域(建築基準法22・62条)における、共同住宅の規制
   ※1【耐火建築物】 法第2条9号(詳細は多種に及ぶため省略いたします。)
   ※2【準耐火建築物】 法第2条の3(詳細は多種に及ぶため省略いたします。)

 ○ 本件における屋外への出口、避難通路等の規制(当該地域の条例概要)

 各居室から出口に通じる避難上有効な通路(廊下、階段、バルコニー等)を2以上設置し、それぞれの出口から道路に通ずる敷地内通路は、床面積が200u未満は幅員を2m以上とし、200uを超えるものは幅員を3m以上とします。

    
3. 考えられる案
 A棟、B棟共に曳家及び改造工法については支障範囲、残地の形状から採用するのは困難なため、再築による検討を行います。

<第一案>A棟・構外再築工法(同種同等):B棟・構内再築工法(照応建物)

 支障割合の多いA棟を構外移転とします。B棟は構内移転としますが形状を変えずに再配置するには有形的に困難なため、3階建として再築します。

■利点
  • 従前と同様の間取りが確保でき、共同住宅として利用価値が低下しません。
■問題点
  • 条例で定められた敷地内通路の幅員が確保できません。
      1.6m≧3.0m
  • B棟の入居者用の駐車台数が確保できません。
  • 3階建の耐火建築物になるため法令改善費用が生じます。
  • A棟の移転先選定が必要となります。



第一案では、条例で定められた敷地内通路の幅員と駐車台数に問題があります。

<第二案>A棟・構内再築工法(同種同等):B棟・構外再築工法(同種同等)

 支障割合の少ないB棟を構外移転とします。A棟はB棟の跡地に従前と同様の建物形状で再築します。

■利点
  • 条例で定められた敷地内通路の幅員が確保できます。
              2.0m≧2.0m
  • 従前と同様の間取りが確保でき、共同住宅として利用価値が低下しません。
  • A棟の入居者用の駐車台数が確保出来ます。


■問題点
  • B棟の移転先選定が必要となります。




4. まとめ

 以上の2つの案をまとめると下記の表になります。

移転案 第一案 分割 第二案 分割
A棟 再築(同種同等) 再築(同種同等)
B棟 再築(照応建物) 再築(同種同等)
C棟 移転対象外 移転対象外
有形的合理性
機能的合理性
法制的合理性 ×
経済合理性 ×
認定 ×


 上記より本件は、最も合理性に優れた第二案が採用になりました。
今回の事例のように、残地に建物を移転する場合、建築基準法はもちろんですが、その他の公法上の制限等諸法制との関係において法的適合性の検討が必要となります。


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