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FileNo. 032
 

今回の事例は、農家住宅敷地内にある3棟の建物のうち、倉庫兼作業場が道路拡幅事業により支障となり、合理的な移転方法を検討したケースです。




1. 対象物件の概要


■ 敷地概要
  • 敷地面積 : 約 1,380u
  • 買収面積 : 約  270u
  • 残地面積 : 約 1,110u
  • 取得割合 : 約  19.7%
  • 建築基準法の用途地域制限
      第一種住居地域
  • 建築基準法の建築制限
     建ぺい率  :   60%
     容積率    :  200%
     防火指定  : 準防火地域

■ 建物の概要
 
構造 ・ 階数 建築面積 延床面積 備考
(A棟)木造平家建倉庫兼作業場 130u 130u 一部支障
(B棟)木造2階建専用住宅 150u 250u 非支障
(C棟)木造2階建専用住宅 90u 140u 非支障

■ 建物と敷地内の使用状況等
  • A棟は農器具や収穫した農作物を、保管及び加工する場所として利用しています。
  • B棟は所有者夫婦が居住しています。
  • C棟は息子夫婦が居住しています。
  • 敷地内には3台分の駐車スペースがあります。


2. 検討のポイント

  • 支障となる建物は倉庫兼作業場の一部のみであること。
  • 敷地内には多数の庭木が観賞用として植栽されていること。
  • 主な交通手段が自動車であることから現況同様3台分の駐車スペースが必要であること。
  • 実態調査をした結果、近隣に駐車場がないことから、残地内に駐車スペースを確保する必要があること。
          
3. 考えられる案
 建物が複数あり、且つ残地がある場合には、その移転方法はいろいろなパターンが考えられますが、本件は直接支障となる建物のみ再配置することを優先して考えます。
<第一案>A棟 曳家工法

 残地に曳家する案です。

■利点
  • 建物形状が従前と変わりません。
  • 経済的です。
■問題点
  • 駐車スペースが喪失します。
  • 仮倉庫が必要となります。
  • 建物前のスペースが狭くなるため、農作物等の搬入出に支障が生じます。



 第一案では、A棟を従前の形状のまま再配置することは可能ですが、駐車スペースが喪失し、建物の従前機能も図れません。
 尚、改造工法も考えられますが、建物の支障割合が約4割にも及ぶため、主要構造部に与える影響が大きく、合理的ではありません。

<第二案>A棟構内再築工法(立体集約による照応建物)

 A棟を2階建として、従前の場所に再築する案です。

■利点
  • 駐車スペースが確保できます。

■問題点
  • 2階建となることで、倉庫又は作業場を2階に設けることとなり、農作業に支障が生じます。
  • 仮倉庫が必要となります。



第二案では、建物の機能面に問題点が生じます。

<第三案> A棟構内再築工法(平家建による照応建物)

 C棟東側を移転先とし、建物形状を変更した上、平家建で再築する案です。

■利点
  • 従前と同様の機能が確保できます。
  • 駐車スペースが確保できます。

■問題点
  • 庭木類の関連移転が生じます。
  • 他案と比べ移転費用が高額となります。
  • 仮倉庫が必要となります。




 第三案では、従前建物の機能回復ができ、駐車スペースも確保することが出来ますが、庭木類の関連移転が生じることにより、移転費用が他案と比べ高額となります。

4. まとめ

 以上の3案をまとめると以下の通りとなります。

検討項目 第一案 第ニ案 第三案
移転方法 曳家工法 立体集約による照応建物 平家建による照応建物
有形的合理性 ×
機能的合理性 ×
経済合理性 ×
認 定     採用


 本件は、上表の通り第三案が採用となりました。
 第三案は経済的に高額となりますが、他2案では十分な機能回復が図れません。よって、今回は機能的な部分を重要視した工法が採用となりました。
 このように、補償対象となる物件が、物理的及び技術的に移転が可能であっても、従来の機能を著しく損なってはなりません。従って、建物の用途、庭木や自動車の保管場所等を、十分に調査し把握した上で、検討を行う必要があります。


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