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FileNo. 033
 

今回の事例は、○○市が施行した道路改良事業(拡幅工事)により支障となった県立高等学校の施設に対して、機能回復の補償を検討したケースです。




1. 対象物件の概要


■ 敷地概要
  • 敷地面積 : 約 28,100u
  • 買収面積 : 約   500u
  • 残地面積 : 約 27,600u
  • 取得割合 : 約     1.8%
  • 建築基準法の用途地域制限
     市街化調整区域
敷地内の各施設を機能別エリアに区分すると、以下のようになります。
1、校舎等施設エリア
 校舎本体及び体育館・体育器具庫・プールがあり、教育及びクラブ活動等に利用されています。
 また、開校当時に公共下水道が普及していなかったため、現在も浄化槽が使用されています。
 
2、グラウンドエリア
 野球場1面・サッカー兼陸上トラック1面・テニスコート6面(うち3面はバレーボール兼用)を有し、教育及びクラブ活動等に使用されています。
 
3、駐輪場エリア
 生徒用の駐輪場として使用され、有蓋駐輪場4基及び青空駐輪場1ヶ所があります。
 全校生徒数1,000名の約57%が自転車通学をしており、駐輪可能台数の約99%が使用されています。
 
4、駐車場エリア
 職員・来客用駐車場として使用されています。
全職員数65名の約40%が通勤に自動車を利用し、駐車可能台数の約90%が使用されており、残りは来客用として確保されています。

 
■ 建物の概要
建物の構造・用途
  • 校舎:鉄筋コンクリート造4階建
  • 体育館:鉄骨造平家建
  • 体育器具庫:鉄骨造平家建
  • 屋外プール

2. 検討のポイント

  • 移転対象となる高等学校は、「公共事業の施行に伴う公共補償基準要項第三条第2項」に規定する公共施設であるため、機能回復を前提に補償すること。
  • 建物・グラウンドは直接支障にならないため、学校教育法等で規定する設置基準は考慮しないこと。
  • 隣接地は全て宅地として利用されているため、代替地としての取得は困難であること。
  • 支障となるのは、校門・コンクリート塀・外灯・植樹帯等の外構等施設と、職員・来客用青空駐車場、有蓋駐輪場及び青空駐輪場等の駐車場等施設の一部であること。
  • 駐輪場の配置に当たっては、管理上の問題及び生徒用玄関までの動線を考慮し、分散しない配置をすること。
  • 駐輪場・駐車場とも、(使用状況より)既存設置台数の確保が必要であること。
          
3. 考えられる案
<第一案>

 外構等施設を平行移動して残地に配置し、青空駐輪場を体育館の東側に移設する案です。

■利点
  • 経済的です。
  • 駐輪場・駐車場とも、既存設置台数の確保が可能です。
■問題点
  • 駐輪場が分散してしまいます。
  • 駐車場を現況のままセットバックさせると、一部車の旋回が困難となる箇所が生じます。

<第二案>

駐輪場を機能集約する案です。

 第一案と同様に外構等施設を再配置します。
有蓋駐輪場4基全てを撤去して、そこに必要な駐輪台数分のサイクルラックを新設し、これによって生じるスペースを駐車場の移転先地とします。

■利点
  • 駐輪場・駐車場とも、既存設置台数の確保が可能です。
  • 駐輪場が分散しません。
  • 車の旋回に支障が出ません。

■問題点
  • (第一案と比較して)補償額が高額です。
  • 駐輪場の機能集約では、台数は確保できるもののスペースが減少し、混雑時に自転車の出し入れに支障をきたします。
  • 駐車場と駐輪場が新たに隣接する事で、安全面に問題が生じます。


<第三案> 

 第二案で問題となる駐輪場での安全性を考慮に入れて機能集約した案です。

 第一案と同様に外構等施設を再配置します。
有蓋駐輪場4基のうち1基を撤去して、青空駐輪場に必要な駐輪台数分のサイクルラックを新設します。
 また、浄化槽を撤去して、跡地に駐車場を新設します。
※なお、当該浄化槽は、前面道路に敷設された下水道本管に接合する事により、汚水処理としての機能を維持できます。

■利点
  • 駐輪場・駐車場とも、既存設置台数の確保が可能です。
  • 駐輪場が分散しません。
  • 車の旋回に支障が出ません。
  • 駐輪場のスペースが充分に取れるため、安全性が確保されます。

■問題点
  • 補償額が高額です。

4. まとめ

 以上の3つの案をまとめると下記の表になります。

検討項目 第一案 第ニ案 第三案
外構等施設 移設 移設 移設
浄化槽及び関連施設 既存のまま 既存のまま 撤去
自転車置場 移設 代替施設の新設 移設一部代替施設の新設
青空駐車場 移設 移設 浄化槽跡地に新設
下水道本管接合 浄化槽の代替として新設
有形的合理性
機能的合理性 × ×
経済的合理性 ×
認 定     採用


 上記より本件は、第三案が採用となりました。

 公共施設等の補償は、実際に従前施設の有していた公的機能の回復を最優先に考慮し、検討する事が求められます。今回の事例は、学校機能の回復を前提におき、エリア設定により各機能を認識して効率的な敷地確保を検討しました。その結果、浄化槽を本下水に切替えその跡地を利用する事で、残地内へ既存施設を再配置する事が出来ました。


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