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FileNo. 036
 
 今回の事例は、道路拡幅事業に伴い、農家住宅敷地内にある6棟の建物のうち、木造平家建車庫、土蔵造2階建倉庫、木造平家建倉庫の3棟が支障となり、合理的な移転方法を検討したケースです。



1.対象の概要

■ 敷地概要
  • 敷地面積 :  約 2,200u
  • 買収面積 :  約  600u
  • 残地面積 :  約 1,600u
  • 取得割合 :  約   27.3%
  • 建築基準法の用途地域制限    
    • 市街化調整区域
  • 建築基準法の建築制限
    • 建ぺい率  :    50%
    • 容積率    :   100%
    • 防火指定  :防火指定なし
■ 建物の概要 

 建物の構造・用途・面積
No 構造・階数 用途 建築面積 延床面積 備考
A棟 木造平屋建 車庫 55.00 55.00 全部支障
B棟 土蔵造2階建 倉庫 25.50 51.00 全部支障
C棟 木造平屋建 倉庫 60.00 60.00 全部支障
D棟 木造平屋建 倉庫・作業場 20.00 20.00  
E棟 木造2階建 倉庫 58.00 100.00  
F棟 木造2階建 専用住宅 210.00 300.00  
    428.50u 586.00u  

■ 建物と敷地内の使用状況等
  • A棟には、乗用車4台が保管されています。
  • B棟、C棟及びE棟は、農器具等を保管する場所として利用されており、C棟には農作業車1台、E棟には軽トラック1台が、それぞれ保管されています。
  • D棟は収穫した農作物を、保管及び加工する場所として利用しています。
  • F棟には所有者家族が、居住しています。
  • 敷地中央部には、庭木等が鑑賞用として植栽されています。
  • 所有者は、生産農家であり、空地部分は収穫した農作物の洗浄、箱詰、器具の手入れ等の作業スペースとして利用している他、車の切り返しスペースとしても利用しています。


2. 検討のポイント

  • A・B・C棟のみが、支障となること。
  • 再配置可能な残地が有ること。
  • 敷地の空地部分は、作業スペース及び車両切り返しスペースとして利用されていること。
  • 農器具等は、それぞれ倉庫の1階部分に保管され、2階部分には日用品等が保管されていること。
  • それぞれの倉庫には、入口まで車で乗り入れ、農器具等の般入出を行っていること。

4. 考えられる案
 
 残地内の再配置において、曳家工法と再築工法それぞれ考えられますが、A〜E棟は建物も古く、構造的にも補強が必要となることから、経済的に曳家工法は再築工法よりも高額となるため、今回は再築工法を前提に検討を行います。なお、法制的には、建築基準法上残地に各建物を従前の形状で配置することは、問題有りません。(下記参照)

残地面積=1600u、建築面積=428.50u、延べ面積=586.00u 
建ペイ率=1,600×0.5= 800.00u > 428.50u 適 合
容 積 率=1,600×1.0=1,600.00u > 586.00u 適 合

<第一案> A・B・C棟 再築工法

 直接支障となるA・B・C棟のみを再築し、残地内に再配置する案です。

■ 利点
  • 経済的です。
  • 従前とほぼ同様の作業スペース及び、車両切り返しスペースが確保できます。
■ 問題点
  • 車両動線の確保が困難になります。
  • 農器具等の搬入出に支障をきたします。


 第一案では、支障となる建物を、有形的に再配置することは可能ですが、車両動線の確保が困難となります。また、農器具等の搬入出に支障をきたし、農家敷地としての機能も低下するため、従前と同様の機能回復が図れません。

<第二案> B棟を再築 A・C棟を合棟(2階建による照応建物)
 
 直接支障となる3棟の内、B棟は従前と同種同等の建物、A・C棟は合棟した2階建の照応建物として、それぞれ再築し、残地内に再配置する案です。
 
■ 利点
  • 従前とほぼ同様の作業スペース及び、車両切り返しスペースが確保できます。
■ 問題点
  • 第一案より高額になります。
  • 合棟するA・C棟は、1階に車庫、2階に倉庫を設けるため、農器具等の搬入出に支障をきたします。また、敷地北側に配置するため、車両の出入りも困難となります。



 第二案では、B棟を従前と同種同等の建物、A・C棟は合棟した2階建の照応建物として再配置しましたが、倉庫を2階に設けるため、農器具等の搬入出及び、車両の出入りも困難となり、十分な機能回復が図れません。

<第三案>A・B・C・D・E棟 再築工法
 
 直接支障とならないD棟(木造平屋建倉庫兼作業場)及び、E棟(木造2階建倉庫)を含めた、5棟(A〜E)を従前と同種同等の建物で再築し、再配置する案です。
 
■ 利点
  • 従前とほぼ同様の作業スペース及び、車両切り返しスペースが確保できます。
  • 車両動線が確保できます。
  • 農器具等の搬入出に、支障をきたしません。
■ 問題点
  • 関連移転が生じます。
  • 移転費用が最も高額になります。



 第三案では、従前と同様の機能回復が図れますが、直接支障とならない建物の関連移転が生じることにより、移転費用が最も高額となります。


5. まとめ
以上の3つの案をまとめると下記の表になります。
移転方法 第一案 第二案 第三案
移転方法 再築工法(3棟) 再築工法(同種同等・
照応建物)
再築工法(関連移転)
有形的合理性
機能的合理性 × ×
経済合理性 ×
認 定     採用

 本件は、上記の通り第三案が採用となりました。
第三案では、関連移転が生じるため経済的に高額となりますが、他案では十分な機能回復が図れません。よって、従前と同様の機能回復が図れる第三案が採用工法となりました。
このように支障となる建物が、物理的に移転が可能であっても、従来の機能を著しく損なってはなりません。従って、直接支障とならない建物の関連移転も考慮し、建物の用途や構造、使用実態等を十分に調査し、把握した上で検討を行うことが必要です。

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